― 大学別データ判定 ―
岐阜医療科学大学は“誰でも入れる”Fラン?就職まで数字で判定した
河合塾の学部学科ランク全学科35.0と、公的一次データである収容定員充足率94.6%で、岐阜医療科学大学の実像を分解する

この記事の目次
河合塾の偏差値で見る岐阜医療科学大学 全学科35.0の意味
まず数字を置きます。私が受験指導で私立大学の難易度を測るときに基準にするのは、河合塾のKei-Netが出す偏差値です。岐阜医療科学大学の学部学科ランクは、四つの学科すべてが35.0で並びます。学部学科ランクとは、複数の入試方式のデータを三教科相当の成績でまとめ直した、その大学のいちばん素直な難易度を指します。
| 学部 | 学科 | 河合塾 偏差値 |
|---|---|---|
| 薬学部 | 薬学科 | 35.0 |
| 保健科学部 | 臨床検査学科 | 35.0 |
| 保健科学部 | 放射線技術学科 | 35.0 |
| 看護学部 | 看護学科 | 35.0 |
河合塾の偏差値帯は35.0が下限表示です。つまり35.0という数字は、実質的にこれ以上は下がらない一番下の表示に近い位置にあります。さらに入試方式別に見ると、薬学部の前期(化学必須型)や保健科学部臨床検査学科の前期3科目型では、合否ラインを引けないBF(ボーダーフリー)判定が出る方式もあります。逆に放射線技術学科の一部方式では37.5が付きます。共通テスト利用のボーダー得点率は41%から48%の範囲です。
ここで受験生が混乱しやすい点を先に潰しておきます。同じ大学なのに、サイトによって偏差値がまるで違います。進研模試(ベネッセ)基準だと41から46、別のランキングサイトでは44.8前後といった数字も出ます。これは大学が変わったのではなく、模試の母集団が違うためです。進研模試は受験者層が幅広く、同じ学力でも偏差値が高めに出ます。私立大学の入りやすさを比較するなら、母集団の近い河合塾の数値で揃えるのが実務の定石です。本記事は一貫して河合塾基準で判定します。
出典: 河合塾Kei-Net大学検索システム(入試難易予想ランキング)
ここが本題 収容定員充足率94.6%が示す二つの顔
偏差値だけを見て終わる記事は世の中に山ほどあります。私がこの記事で足したいのは、他ではまず出てこない一次データです。それが収容定員充足率です。これは日本私立学校振興・共済事業団が運営する私学版大学ポートレートに載る公的な数字で、その大学の在籍学生数が定員の何パーセントを埋めているかを示します。岐阜医療科学大学の収容定員充足率は94.6%です。この一つの数字が、相反する二つの顔を持っています。
一つ目の顔は前向きな話です。94.6%は、定員をほぼ埋め切っている水準です。私立大学の四割前後が定員割れに沈み、Fラン帯の単科私大では在籍率が七割台に落ちる学校も珍しくない中で、94.6%はまだ選ばれている大学の数字です。医療系の資格が取れる岐阜県内の受け皿として、一定の志願者を毎年集められている証拠でもあります。定員が埋まらず経営が細る大学は、教員も設備も先細ります。その心配が相対的に小さいのは、進学先としては安心材料です。
二つ目の顔は、正直な話です。94.6%は100%を割っています。つまり定員をフルには満たせていません。これを偏差値35.0と重ねると、一つの構造が見えます。難易度を下げても定員をぴったりは埋め切れない、言い換えれば難易度で受験生を絞る余裕がない、ということです。入りやすさを維持しているからこそ人が集まる。これは実質全入という当サイトの判定と、きれいに符合します。充足率は高いから安心という話でも、低いから危険という話でもありません。偏差値と重ねて初めて、この大学の立ち位置が立体的に見えます。
この二つを踏まえた当サイトの中立判定を、基準ごと明示します。当サイトは入りやすさの度合いを次のランクで表します。S判定はBF(ボーダーフリー)で、河合塾が合否ラインすら引けない最下層、いわゆる真性のFランです。A判定は実質全入で、偏差値35前後、出願すればほぼ受かる純Fラン帯を指します。以降、難易度が上がるほどB、Cと評価が上がります。岐阜医療科学大学は、学部学科ランクに35.0という数値が付いている(BFで消えていない)ため、真性FランのSではなく、A判定(実質全入)としました。これは学力難易度の判定であって、教育の質や国家試験実績を否定するものではありません。次章以降で、その中身を一次データで見ていきます。
出典: 私学版大学ポートレート(日本私立学校振興・共済事業団)
やばい 恥ずかしい という噂は本当か
検索の入り口には、やばい、恥ずかしい、といった言葉が並びます。私はこの手の言葉を逐語では扱いません。個人を傷つける書き込みをそのまま転記しても、受験判断の役には立たないからです。代わりに、噂を三つの類型に整理して、データで答え合わせをします。
第一の類型は、偏差値が低いから恥ずかしい、というものです。これは前半で見たとおり、河合塾基準で35.0、純Fラン帯であることは事実です。ここを隠しても仕方がありません。ただし医療系の単科大学は、そもそも学力偏差値より国家資格の取得実績で評価される世界です。恥ずかしいかどうかを決めるのは入口の偏差値ではなく、出口で資格を取れるかどうか、という視点は持っておいて損はありません。
第二の類型は、薬学部は国家試験の実績が不安、というものです。薬学部は6年制で、この不安自体は自然に生まれます。ただし後の章で示すとおり、大学公式が公表している直近の薬剤師国家試験の新卒合格率は全国平均を大きく上回っています。噂の段階で判断せず、公式の数字で確かめるべき論点です。
第三の類型は、有名じゃないからFランと呼ばれる、というものです。知名度と難易度は本来別物ですが、世間ではしばしば混同されます。全国的な知名度は高くない一方で、東海エリアの医療現場では卒業生のネットワークが機能しているというのが実態に近いです。ブランドで選ぶ大学ではなく、資格と地元就職で選ぶ大学、と整理するのがフェアです。噂は感情で語られますが、判断は次章からのデータで下せば十分です。
就職と進路 大学公式データで見る実像
ここからは大学公式のデータを主軸に置きます。まず就職状況です。岐阜医療科学大学が公表している学科別の就職実績は次のとおりで、特徴は求人倍率の高さにあります。
| 学科・専攻 | 就職者数(対象者) | 進学者 | 求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 臨床検査学科 | 61名(66名) | 1名 | 23.8倍 |
| 放射線技術学科 | 76名(86名) | 1名 | 12.0倍 |
| 看護学科 | 87名(100名) | 10名 | 219.6倍 |
| 薬学科 | 48名(50名) | 2名 | 21.2倍 |
| 助産学専攻科 | 15名(15名) | 0名 | 30.6倍 |
看護学科の求人倍率219.6倍という数字が示すのは、資格職の需要の強さです。医療系は景気に左右されにくく、資格さえ取れば就職先に困りにくい構造があります。ここが、同じ偏差値帯の文系Fラン大学とは決定的に違う点です。入口が入りやすくても、出口が資格で守られている。この非対称性を理解しないまま偏差値だけで語ると、判断を誤ります。
次に、その出口を左右する国家試験の合格率です。大学公式が公表した2025年度の新卒合格率は次のとおりで、いずれも全国平均を上回っています。
| 国家資格 | 本学 新卒合格率 | 全国平均 |
|---|---|---|
| 臨床検査技師 | 95.9% | 84.7% |
| 診療放射線技師 | 89.6% | 76.2% |
| 看護師 | 92.6% | 88.3% |
| 保健師 | 90.0% | 87.1% |
| 助産師 | 100.0% | 99.7% |
| 薬剤師 | 94.0% | 68.5% |
薬剤師の94.0%は、全国平均68.5%と比べて突出しています。前章で触れた薬学部への不安に対する、公式からの直接の回答がこの数字です。主な就職先には、岐阜県総合医療センター、岐阜県立多治見病院、大垣市民病院、岐阜市民病院、岐阜大学医学部附属病院、名古屋大学医学部附属病院、名古屋市立大学病院、藤田医科大学病院、松波総合病院、JA岐阜厚生連系の病院などが並びます。公立・公的病院への就職が厚いのが、この大学の進路の色です。
出典: 岐阜医療科学大学公式(就職実績・2025年度国家試験合格率)、大学受験パスナビ(旺文社)
何が学べるか 医療系総合大学の中身
岐阜医療科学大学は、設置法人の神野学園のもと、前身の国際医学総合技術学院や岐阜医療技術短期大学の時代から数えておよそ50年、医療技術者の養成一本でやってきた医療系総合大学です。学部は三つ、学科は四つに整理できます。保健科学部に臨床検査学科と放射線技術学科、看護学部に看護学科、薬学部に薬学科です。加えて助産学専攻科と大学院保健医療学研究科があります。
各学科は、卒業と同時に国家試験の受験資格が得られる資格直結型です。臨床検査学科は臨床検査技師、放射線技術学科は診療放射線技師、看護学科は看護師に加えて選択制で保健師や助産師、薬学科は薬剤師を目指します。文系のFラン大学のように出口が漠然としておらず、入学時点で職業が定まっているのが医療系単科大学の強みです。
教育面の看板はチーム医療です。1年次に全学科必修でチーム医療論を学び、最終学年では全学科の学生が合同チームを組んで症例に取り組むチーム医療演習を行います。臨床検査、放射線、看護、薬学が一つの大学に揃っているからこそできる横断型のカリキュラムです。もう一つの特徴がクラス担任制で、これが国家試験対策のマンツーマン指導につながっています。入りやすさの一方で、入学後の面倒見の良さで結果を出す、という設計思想が読み取れます。
入試方式と合格難易度 実際どのくらいで受かるのか
合格難易度を具体的に見ます。一般選抜前期には2科目選択型と3科目選択型があり、薬学部には化学必須型があります。共通テスト利用入試のボーダー得点率は、学科や方式により41%から48%です。得点率50%を切るラインでも合格圏に入る方式がある、というのが実感に近い難易度です。総合型選抜や学校推薦型選抜も設けられており、一般選抜以外のルートも広く開いています。
河合塾の偏差値35.0や、方式によってはBF判定が出ることを踏まえると、基礎学力をきちんと固めれば十分に手が届く水準です。私が受験指導で見てきた感覚で言えば、共通テスト系の対策を早めに始めて基礎を落とさない受験生であれば、過度に恐れる難易度ではありません。ただし、入りやすさと国家試験合格率の高さは矛盾しません。入学後に相応の勉強量を求められるからこそ、出口の合格率が保たれています。入口の易しさが入学後も続くと誤解しないことが大切です。
特待生入試にも触れておきます。成績上位者には奨学金や学費免除が用意されており、とくに薬学部の学費一部免除特待生制度は、授業料と教育充実費を合わせて年間119万円を免除する大型のものです。入りやすさを入口に、成績次第で学費を大きく下げられる設計になっています。学力に不安がある人ほど、この制度の要件を早めに確認しておく価値があります。
学費と奨学金 4年制と6年制でこれだけ違う
学費は学部で大きく変わります。大学公式の学納金をもとに、初年度納入金の目安を整理します。
| 区分 | 入学金 | 年間授業料 | 年間教育充実費 | 初年度納入金の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 保健科学部・看護学部(4年制) | 250,000円 | 800,000円 | 750,000円 | 約1,888,000円 |
| 薬学部(6年制) | 200,000円 | 1,100,000円 | 950,000円 | 約2,377,000円 |
初年度納入金には入学金、授業料、教育充実費に加えて委託徴収会費などが含まれます。2年目以降は入学金がなくなるぶん下がります。薬学部は6年制のため、総額では私立薬学部として標準的な水準になります。金額は年度で改定されるため、最終確認は必ず募集要項で行ってください。
負担を下げる制度は手厚めです。給付型奨学金は、保健科学部と看護学部が月2万円を4年間で最大96万円、薬学部が月3万円を6年間で最大216万円です。前章で触れた薬学部の学費一部免除特待生制度を使えば、年間の学費を大きく圧縮できます。加えて岐阜医療科学大学は国の高等教育の修学支援新制度の対象校で、令和7年度からの多子世帯の授業料等無償化の対象にも含まれます。学費の額面だけで諦める前に、これらの併用可否を確認する価値があります。
出典: 岐阜医療科学大学公式(学納金・奨学金)、ベネッセ マナビジョン
立地とキャンパス 関と可児の二拠点
キャンパスは岐阜県内に二つあります。保健科学部の関キャンパスは岐阜県関市、看護学部と薬学部の可児キャンパスは岐阜県可児市にあります。学科によって通う場所が変わるため、志望学科の所在地を最初に確認しておくと、下宿や通学の計画が立てやすくなります。
通学環境については、スクールバスや岐阜バスの無料制度が用意されています。在学生の口コミでは、無料で使える一方でバスの本数が多くはないという声もあり、時間割に合わせた計画が要る点は現実的に押さえておくとよいでしょう。名古屋方面からの通学者も一定数おり、東海エリアの医療機関への就職が厚いことと地理的に整合します。岐阜県内で医療系の資格を総合的に学べる大学という立ち位置は、地元志向の受験生にとって明確な選択理由になります。
岐阜医療科学大学が向く人 合わない人
ここまでの一次データを踏まえ、判断材料を整理します。
向く人
- 医療系の国家資格を取り、資格職として東海エリアで働きたい人
- 入口の偏差値より、出口の国家試験合格率と就職で大学を選びたい人
- クラス担任制やマンツーマン指導など、面倒見の良い環境で勉強したい人
- 特待生や奨学金を使って学費を抑えたい、成績で挽回する意欲がある人
- 岐阜・愛知を中心に地元で就職したい人
合わない人
- 全国的なブランドや大学名の知名度を最優先する人
- 入学後の勉強量を避けたい人(入りやすさは入学後には続きません)
- 医療以外の幅広い進路を大学で探したい人
- 大都市圏のキャンパスライフや通学の利便性を重視する人
Fランという一語で切り捨てるにはもったいない情報が、ここまでのデータには詰まっています。逆に、名前の通りの良さを期待すると期待外れになります。自分がどちらの軸で大学を選ぶのかを先に決めるのが、いちばんの近道です。
まとめ 岐阜医療科学大学はFランか
結論を繰り返します。当サイトの中立判定はA(実質全入)です。河合塾の学部学科ランクは四学科すべて35.0で、私立大学の中では入りやすい純Fラン帯にあります。方式によってはBF判定も出ます。この点で、Fランと呼ばれること自体は否定しません。
ただし、それは物語の半分です。収容定員充足率は94.6%で、定員をほぼ埋めており、選ばれ続けている大学です。国家試験の新卒合格率は臨床検査技師95.9%、薬剤師94.0%をはじめ全学科で全国平均を上回り、看護学科の求人倍率は219.6倍に達します。入口が易しく、出口が資格で守られている。この非対称の構造こそが、この大学の正体です。偏差値という一つの物差しで恥ずかしいかどうかを決める前に、充足率と国家試験合格率という別の物差しを重ねてください。判断はそのあとで十分に間に合います。
よくある質問
岐阜医療科学大学はFランですか。
当サイトの中立判定はA(実質全入)です。河合塾の学部学科ランクは四学科すべて35.0で、私立大学の中では入りやすい純Fラン帯にあります。ただし国家試験の新卒合格率は全学科で全国平均を上回っており、入口の偏差値だけで実力を測れる大学ではありません。
偏差値がサイトによって違うのはなぜですか。
模試の母集団が違うためです。河合塾基準では35.0前後、進研模試(ベネッセ)基準では41から46と、同じ大学でも10前後ずれます。私立大学の入りやすさを比較するときは、母集団の近い河合塾の数値で揃えるのが実務の基準です。本記事も河合塾基準で判定しています。
就職や国家試験の実績はどうですか。
大学公式によれば、2025年度の新卒国家試験合格率は臨床検査技師95.9%、診療放射線技師89.6%、看護師92.6%、薬剤師94.0%などで、いずれも全国平均を上回っています。看護学科の求人倍率は219.6倍で、医療系資格職への就職が進路の中心です。
学費はいくらかかりますか。
大学公式の学納金をもとにした初年度納入金の目安は、保健科学部・看護学部が約188.8万円、薬学部(6年制)が約237.7万円です。給付型奨学金や特待生による学費免除、高等教育の修学支援新制度の対象校でもあり、負担を下げる制度は用意されています。金額は年度で改定されるため募集要項での確認が必要です。
収容定員充足率94.6%とはどういう意味ですか。
在籍学生数が定員の何パーセントを埋めているかを示す公的な数字で、出典は私学版大学ポートレート(私学事業団)です。94.6%は定員をほぼ埋めており、定員割れが深刻な私大が多い中では選ばれ続けている水準です。一方で100%を割っており、偏差値35と重ねると難易度で受験生を絞る余裕がない実質全入の構造も読み取れます。
薬学部はやめたほうがいいですか。
一概には言えません。新設校ゆえの実績への不安は語られますが、大学公式の2025年度の薬剤師国家試験の新卒合格率は94.0%で、全国平均68.5%を大きく上回っています。ただし6年間の学費や国家試験を見据えた学習が前提です。特待生の学費一部免除制度の要件とあわせて検討するのがよいでしょう。